【創作】比喩表現の基本的な考え方【言葉と事象の組み合わせ】

 

秀逸な比喩表現で読み手をうならせることは、書き手にとってカタルシスのひとつです。

だからこそ比喩表現を考えるとき、書き手は頭を悩ませるわけですね。

今回はこの「比喩表現」について、基本的な考え方をご紹介します。

 

 

目的は「読み手にわからせる」こと

書き手は前提として、「比喩表現を使うこと」を目的としてはいけません。

本来の目的は、比喩表現を使って「読み手にわからせること」です。

言葉だけで解決できるとは限らないため、書き手が言葉に縛られる必要はないのです。

場面のなかで「誰が見てもそう感じる状況」をコンパクトに描くことも大事ですね。

 

まず書き手は「その比喩が本当に必要な表現なのか」を考えましょう。

伝わりづらくなる確率が高いのでれば、無理をする必要はありません。

「比喩を使ったほうがコンパクトに伝わる」と感じた場合にのみ、最適な表現を探しはじめるべきです。

 

 

独自の着眼点で物事を見る

比喩表現を考えるときのポイントは「切り口」です。

独自の着眼点から物事を見つめることができれば、きっと安直な言葉では表現されないはずです。

 

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「比喩表現を使うこと」を目的にすると、この部分がおろそかになります。

重要なのは書き手の「見方」「考え方」「捉え方」であり、これらが比喩表現の源泉となります。

斬新な切り口をもっていれば、そこからひねりだされる表現も平凡ではなくなるでしょう。

 

 

「組み合わせ」を考える

「言葉を使うこと」や「言葉を考えること」でありません。

「表現を考えること」の本質は、事象と言葉の組み合わせを考えることです。

 

でもそれに比べると僕の部屋は死体安置所のように清潔だった。

(村上春樹『ノルウェイの森』講談社文庫)

 

「僕の部屋⇔死体安置所」といった結びつけから、その様子をコンパクトに表現しています。

ここに難しい言葉や、馴染みのない専門用語は使われていません。

 

かんたんな言葉しか使わなかったとしても、その組み合わせによって秀逸な比喩表現は成立するのです。

 

重要なのは、「事象と言葉を組み合わせる独自の回路」をもつことです。

書き手らしい回路をもって接合された表現は、「難しい言葉を使った表現」とは違った非凡さをもちます。

言葉そのものを考えるのではなく、「いかにして事象と言葉を有機的に組み合わせるか」を考えるのです。

この回路が正常に作動していれば、読み手に伝わる比喩表現を描くことができるでしょう。

 

■ 参考

創作

Posted by 赤鬼