【創作】描写の取捨選択について【能動的に描く】
なにを描いて、なにを描かないか。
あらゆる局面において、書き手が描写をするときはその要素を見極める必要があります。
今回はこのとき行われる「取捨選択」について、具体的に考えていきましょう。
原則、描くのは「必要な情報」だけ
物語のなかで「ビジネスホテルにチェックインする場面」が必要だったとしましょう。
このときの様子を描くとしたら、なにを選んでどのように描くべきでしょうか。
ホテルの外観、内装、ロビー、受付係、書類、カギ……など、扱える要素はたくさんありますね。
ここで考えるべきは、「読み手にとって本当に必要な情報であるか」です。
もしも上記の要素が物語に関係ないのであれば、読み手にとっても不要な情報となります。
不要な情報であれば、あえて読み手に提示するべきではありません。
この場面では取り立ててなにも描かず、「この日僕はビジネスホテルに泊まることにした」といったように、事実を伝えれば十分です。
ベタ塗りするような描き方
「不要な情報を捨てる」といっても、なかなか思い切れない書き手も多いはずです。
ここで発想を転換させて考えてみましょう。
ホテルの外観、内装、ロビー、受付係、書類、カギ……といったように、ていねいな描写を心がけたとします。
しかし本来、それは「描く必要のない要素」ですね。
不要な情報に文字数をかけるのは馬鹿馬鹿しく思えてくるはずです。
このような「ベタ塗りするような描き方」は、初心者にありがちなミスといわれています。
本人は一生懸命書いているつもりでも、その内容はどこまでいっても不要な情報でしかありません。
意図的に「だれ場」を作っているならまだしも、そうでない場合は徒労に終わってしまいます。
そうならないためにも、要素の取捨選択は適切に行わなければならないのです。
有機的に作用させる
あくまでも重要なのは、適切に取捨選択することです。
この「適切に」というのが頭を悩ませる部分ですね。
要素を選ぶときのポイントは、物語に対して有機的に作用するかどうかです。
例
● ホテルの様子を描写する
⇒ 物語の舞台や重要な拠点となる
⇒ ホテルの質(高い・安い)で金銭事情を暗に示す
⇒ ホテルの様子に主人公の心情を投影させる
● 受付係を描写する
⇒ 受付係がキーパーソンとなる(恋に落ちるなど)
⇒ 受付でのやりとりから物語を動かす情報を入手する
⇒ 主人公の情報(接し方、心境など)を読み手に提供する
● 書類、カギ
⇒ 書類記入で主人公の情報(名前や出身地など)を提示する
⇒ カギのや部屋番号をメタファーとして使う
⇒ 後々、物語を動かすアイテムとする
あくまでも例でしかありませんが、それぞれに「書き手の狙い」を感じとれますね。
書き手の狙いさえしっかりしていれば、描写が意味をもちます。
そのとき扱う要素は物語に対して有機的に作用するでしょう。
要素を取捨選択するにあたって、書き手はその都度大きな決断を迫られます。
「書き漏らし」を恐れて塗りつぶすように描いたとしても、それは作品のためになりません。
一文一文の描写が明確な意味をもつよう、適切に要素をピックアップしていきましょう。
■ 参考
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