かぎ括弧の強調に頼らない
かぎ括弧を使えば、中にある文言が強調されます。
ただ「 」で閉じるだけなので、かんたんに読み手の目を引くことができるのです。
とても有効なテクニックですが、これに頼りすぎると思わぬ誤解を招く可能性があります。
原文
憲法第9条には、「日本は武力を持たない」と書かれている。
文章の内容としては間違っていません。
しかし、「日本は武力を持たない」という文言の書き方には、大きな問題があります。
条文に書かれている内容をかぎ括弧で閉じたことにより、まるで引用しているかのような書き方になっていますね。
ここで条文を読んでみましょう。
憲法第9条第1項
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
たしかに武力を持たないと読み取ることができる内容ですが、「日本は武力を持たない」とは一言も書いていません。
「日本は武力を持たない」は、あくまで書き手が要約したものであり、引用したものではないのです。
誤解を招く可能性があるので、改善しましょう。
改善文1
憲法第9条第1項には、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と書かれている。
このような書き方をすれば、誤解されることはありません。
しかし条文をそのまま挿入したため、一般の文章としてはやや仰々しい印象を受けます。
もっとかんたんに書きましょう。
改善文2
憲法第9条には、日本は武力を持たないと書かれている。
原文との違いは、かぎ括弧の有無だけです。
文章をわかりづらくしていた原因は、まぎらわしいかぎ括弧があったからなのです。
引用と誤解されそうなかぎ括弧を外すことで、誰が読んでも一定の理解を得られる文章になりました。
このように、条文や論文、書籍など、明文化されているものに対してかぎ括弧を使うときには注意が必要です。
いずれの場合も、読み手のことを考えることが重要ですね。
「強調するためのかぎ括弧」を否定するわけではありません。
しかし、誤解を招くような使い方は避けましょう。
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