回想シーンを使うタイミング
何気ない会話がきっかけとなり、過去を思い出すことがありますね。
これを小説に持ち込むとしたら、会話の間の「回想シーン」となります。
例をみてみましょう。
例
「もう過去のことだ。いい加減目を覚ましたらどうだ?」
「僕にとって、まだあの事件は終わっていないんだ」
(回想シーン)僕は十数年前の出来事を思い出した。
~~~~~~
「気持ちはわかるが、今さらどうにもならないだろう」
回想シーンをもって構築すれば、さまざまな場面を物語に盛り込むことができるのです。
書き手としてはとても使いやすいでしょう。
しかし、会話の間に入る回想シーンには弱点があります。
時制が不自然になるのです。
例文をもう一度見てみましょう。
例
A「もう過去のことだ。いい加減目を覚ましたらどうだ?」
B「僕にとって、まだあの事件は終わっていないんだ」
(回想シーン)僕は十数年前の出来事を思い出した。
~~~~~~
A「気持ちはわかるが、今さらどうにもならないだろう」
青字で書かれた、会話と会話の間。
この手法では、この「間」に回想シーンが入ることになりますね。
Bが回想しているとき、Aは何をしているのでしょう。
回想が終わるまで、ずっと静止しているのでしょうか。
もしくは、回想自体が0.001秒くらいの時間で行われたのでしょうか。
物語の世界において、時間の進み方が変わるのは明らかですね。
それに対して読み手は、不自然に思ったり、違和感を覚えたりすることがあります。
書き手は、この時間の進み方をマネージしなければなりません。
もっともかんたんな方法は、主人公が独りでいるときに限定することです。
たとえば、帰路についたときの「電車に揺られながら」や「車を運転しながら」でも良いでしょうし、自宅についてからの「ご飯を食べながら」や「シャワーを浴びながら」でも良いでしょう。
多くの場合、これらは「小説の内容とは関係のない時間」ですね。
ここに回想シーンを取り入れれば、物語の世界にある時間軸を侵害しません。
回想を成立させるにあたって、これがもっともかんたんに取り入れることができるタイミングであり、もっとも自然な仕上がりになるはずです
使いやすい手法には、罠があります。
書き手はその罠にかからないよう、工夫を重ねながら、小説をより良いものにしていかなければなりません。
回想シーンを取り入れるときは、安易に考えず、その使いどころをしっかり見極めましょう。
■ 参考
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