情景を描写するとは

 

景色をただ模写するだけでは、情景描写とはいえません。

その場合、「写実」といったほうが正しいでしょう。

 

まずは、「情景」の意味を知らないままでは話がすすみません。

辞書で調べてみると、おおよそこのような意味で紹介されているでしょう。

 

” 人間の心を通じて感じられる、景色や場面 “

 

例として、とある部屋の様子を読み手に伝えるとしましょう。

こう書かれていたとします。

 

 

例文

 その部屋の中央には、古びた豆電球が吊り下がっていた。

 

字面だけを見ると、ほとんど説明文です。

しかし、「古びた豆電球」というキーワードが、どこかもの悲しげな雰囲気を演出していますね。

 

このように、描写は説明的な要素を多く含んでいます。

しかし、その実態は、間接的な心理描写でもあるのです。

 

人間の心模様を言語化することは、至難の業です。

だからこそ、物事やその様子に心情を投影させて、読み手に伝えようとするわけですね。

 

 

書き手はこのことを理解したうえで、そこに何を描くかを決めなければなりません。

 

ポイントは、視点と心境のつながりを意識すること。

 

人間の「視点」とは不思議なもので、メンタルの影響を大きく受けています。

 
たとえば、あなたが崖のふちに立っているとします。

 

そのとき、あなたの感情が、

● ネガティブなものであれば、荒れた崖下

● ポジティブなものであれば、遠くの綺麗な景色

 

というように、心境によって視界に入ってくるものは変わってくるのです。

 

このことは、文章にそのまま応用できます。

何を描くかによって、その場面は様変わりするのです。

 

 

普段見えている景色は、無意識に選別されたものである。

これを踏まえて描写すると、心情と景色がマッチングすることができ、情景に深みが増します。

そこに書かれた内容は、きっと読み手に伝わるでしょう。

 

Posted by 赤鬼