「直接話法」と「間接話法」
今回は、誰かの発言を文章に落とし込む表現についてご紹介します。
この表現方法は、大きく分けて2種類あります。
「直接話法」と「間接話法」です。
例文を読んでみましょう。
● 直接話法
部長は、「君たちでこのプロジェクトを進めてくれ」と言った。
● 間接話法
部長は、このプロジェクトを進めるよう私たちに命じた。
それぞれの特長について見ていきましょう。
直接話法について
例文 : 部長は、「君たちでこのプロジェクトを進めてくれ」と言った。
直接話法では、発言をそのまま文章で再現します。
言いかえれば、「話し言葉」を文章表現として使えるわけです。
発言や会話を落とし込むため、リアルな文章を書くことができます。
たとえば、発言者の語調や人となり、その場の雰囲気などは、なかなか表現しづらいところです。
言葉をかぎ括弧でくくってしまえば、それらもリアルに伝えることができるのです。
デメリットとしては、直接話法で書かれた内容に書き手の主観が混じることです。
例では「君たちでこのプロジェクトを進めてくれ」となっていましたね。
しかし、もしかしたら「おい、これやっとけ。おまえが編成したチームで。この案件な」だったのかもしれません。
発言のとおりに書けば、問題がないように思えます。
しかし、適切な表現ではなかったり、文章のリズムが狂わせたり、雰囲気が壊れてしまったりと、不都合が生じる場合があるのです。
書き手は、その内容が文章に馴染むように配慮しなければなりません。
つまり、直接話法を使ったリアルさは、書き手によって作ることが前提にあるのです。
文章にポジティブなものをもたらすことができるよう、熟考して落とし込みましょう。
間接話法について
例文 : 部長は、このプロジェクトを進めるよう私たちに命じた。
間接話法は、発言を書き言葉にして表現します。
文章に落とし込む段階で書き言葉に変換しているため、違和感なく書きすすめることができます。
これがもっとも大きなメリットです。
間接話法では、発言者の主観が弱まります。
その内容はもちろん、かぎ括弧をつかわないわけですから、視覚的にも同じことが言えますね。
これは、書き手の主観に寄り添うことでもあり、同時に、内容に客観性がもたらされることでもあります。
概略としてまとめたり、事実を忠実に伝えたい場合には、間接話法が適しています。
デメリットとしては、直接話法に比べて使い方が難しいといったところが挙げられます。
内容を書き言葉にしてまとめ直す必要があるのは当然ですが、たとえば次の文のような場合が扱いが難しくなります。
例文 : 部長は、このプロジェクトを進めるようにと私たちに命じた。
このように「と」でつなぐ場合、直接話法との区別がつきづらくなるのです。
これでは、せっかくメリットであったはずの客観性が損なわれ、かといってリアル感もないような、中途半端な文章になってしまいます。
最悪の場合、文体が統一されないまま書きかえてしまうこともあるでしょう。
書き手がこれを自覚して、間接話法を用いることが重要です。
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