光景を客観的に整理する
描写をしたくても、何から始めればいいのかわからない。
このような悩みをもった書き手は、少なくないでしょう。
とくに小説の文章は、書き手が自由に表現できます。
一般論としての文章におけるセオリーはあっても、厳格なルールや守るべき決まりごとなど、あってないようなものです。
今回は、小説のように制限のない文章において、描写に困ってしまった場合のヒントをご紹介します。
まずは、光景を客観的に整理することから始めてみてはいかがでしょうか。
つまり、見たままの光景を文章に書き出すのです。
満員電車にいるようすを描写してみましょう。
通勤電車の車内はひどく混雑している。
僕は、つり革をつかめないまま立っている。
電車の揺れは、さして問題にならなかった。
それくらい、身動きが取れない。
あと40分、この状態が続く。
描写文というよりも、説明文のような印象を受けます。
これこそが、重要なポイントです。
そもそも、描写文は本質的に説明文の要素を含んでいます。
読み手に伝えるために描写するのですから、広い意味でそれは説明といえます。
したがって、描写に困ったときは、説明文をベースに書き出してみることをおすすめします。
登場人物の主観を交えてさまざまな表現を使うのは、その後でも遅くはありません。
通勤電車の車内はひどく混雑している。
僕はちょうど良いつり革を探したけれど、とうとう見つけられなかった。
電車の揺れはさして問題にならなかった。それくらい、身動きが取れない。
手のやり場に困ったので鞄から本を出そうとしたが、叶わなかった。
目の前にいる男性から、油ぎった頭皮の匂いがする。
隣にいるOL風の女性のイヤホンから、K-POPが音漏れしている。
あと40分、この状態が続く。気が遠くなる。
例文1をもとに、登場人物の主観をいくつか入れてみました。
内容に「匂い」や「音」も加えると、その様子がリアルになりますね。
光景を客観的に整理して、説明文のつもりで描写文を書く。
方法のひとつとして、これはとても有効です。
例に挙げたように、描写文を書くときの手がかりになり、発展させるためのベースにもなります。
執筆の参考にしてみてはいかがでしょうか。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません