【書き手と登場人物】作中で「意識」を書き分ける【使い方】
今回は、「書き手の意識」と「登場人物の意識」について考えてみましょう。
小説を書くときには、これらを意図的に操作できるようになるべきです。
ここでは両者を区別することはもちろん、具体的な使い方もふまえてご紹介します。
「意識」を区別する
本来、「書き手の意識」と「登場人物の意識」は別物です。
同じような内容を、これまでもご紹介ました。
しかし小説では、これらを混在させながら書くことが多々あります。
次項で、書き手と登場人物、それぞれの意識が混在する例をみてみましょう。
複数の意識が混在する文章の例
たとえば、次のような文章があったとします。
例
彼は汚らしい路地裏から駆け出した。このままだと捕まってしまう。人通りの多い場所をめがけ、必死に走ったのだった。
「彼は」で始まることから、この段階では書き手と登場人物の距離が保たれていることがわかります。
つまり、書き手(語り手)の意識によって書かれているわけです。
次の「このままだと捕まってしまう」では、登場人物の意識を描いていますね。
そしてまた、書き手の意識に戻ります。
これが、「書き手(語り手)の意識」と「登場人物の意識」が混在する文章です。
小難しい話をすると、これは自由間接話法を地の文に応用したものです。
使う・使わないは別として、ひとつの手法として覚えておきましょう。
小説で使うとすれば……
この手法を利用すれば、さまざまな場面を描けるようになります。
文章の途中で登場人物の意識を取り入れるとなれば、ある意味で「異質なもの」として扱うことになります。
「三人称小説での心情・心理描写」では活躍するでしょう。
たとえばサスペンスものなどで、「緊迫した状況」を描くときです。
登場人物本人が思っていることを唐突に描写すると、その場面にさらなる緊迫感をもたらします。
試合を終えたスポーツ選手や、病床に伏してしまった入院患者など、「特殊な心情」を描くときも同様ですね。
ポロポロとこぼれてくる感情を文章に散りばめると、雰囲気を演出することができます。
ややもすると、この手法が本領を発揮するのはSF小説かもしれません。
登場人物の特殊能力(テレパシー、未来予知など)を描くときには、意識を混在させることが必須です。
例にあった内容を応用させて、書き手(語り手)とは違った意識を文中に取り入れることで、解決するでしょう。
汎用性の高い手法ではないかもしれませんが、この手法を使えるかどうかで場面の描き方が変わります。
いざというときの武器として、備えておいても損はないでしょう。
■ 参考
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