「隠すこと」と「明かすこと」
今回は、物語における大きな謎の扱いについて考えましょう。
大きな謎は物語の主軸となる要素であり、それが解明されていく様子は作品の読みどころとなります。
書き手はこれを巧く隠さなければなりません。
謎といえば、ジャンルでいうところのミステリーやサスペンスが思いつくかもしれません。
実際は、ほかのジャンルでも同様です。
青春・恋愛小説において「相手に気持ちを知られてはいけない」のがポイントになるのであれば、これを伏せたまま物語は進んでいきます。
ファンタジーやSFでも、物語に何らかの秘密があるからこそ、これを解き明かそうとしますね。
つまり、何かを隠して大きな謎を設定することはドラマを作ることと同じなのです。
ドラマを作るためには、謎をどのようにして隠すかがポイントです。
これについては、扱うジャンルや書き手のスタイルによってさまざまなやり方があるでしょう。
ひとつの考え方として、次のような姿勢で書いてみてはいかがでしょうか。
どのようにして隠すかではなく、どのようにして明かすかを考えるのです。
なぜなら、「隠すこと」と「明かすこと」は表裏一体の関係にあるからです。
たとえば、物語の主軸に「恋をした女性が “ロボット” だった」という大きな謎を扱うとします。
徹底的に隠すのであれば「高度な技術をもって作られた、人間と見分けがつかないロボット」とすればいいでしょう。
これを解明するとなれば、主人公に気づきを与えるためのきっかけを与えなければなりません。
仮に、彼女の活動限界を3時間に設定したとします。
旅行することはもちろん、映画すら満足に鑑賞できないといった場面を作れば、主人公に違和感を覚えさせることができますね。
そのときの内容は「隠しながらも少しづつ明かしている」ような状態にあります。
ここの内容にもつながることですね。
解明するにあたって必要なのは、書き手がアイディアをもって物語を構築することです。
ここに生じる、書き手の能動性が重要なのです。
くり返しになりますが、謎が解明されるプロセスは「物語の読みどころ」となります。
どのようにして隠すかを考えることを否定するつもりはありませんが、そこに全力でフォーカスしたところで物語が盛り上がるわけではないのです。
それよりも、どのようにして明かすかを考え、その部分を能動的に描くことが重要です。
ぜひ、創作の参考にしてください。
■ 参考
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