目に見えないことを感じとる
世の中には「目に見えるものがすべて」と考える人がいます。
とても合理的な考え方ではあるものの、書き手の在り方としては考えものです。
書き手に必要なのは、「目に見えないことを感じ取る力」です。
物事の本質や意味、裏側や他との関連性など、表面化していないことを見抜くからこそ”物書き”として評価されるのです。
これを鍛えるために提案したいのは、小さな発見を重ねていくことが必要です。
■ 小さな発見を探す
まずは、目に見えることのなかから何かを探ることから始めましょう。
例を挙げながら考えてみます。
街を歩いている途中、5階建ての商業ビルが目に入りました。
下から見上げていると、ひとつのビルでしかありません。
しかし、それぞれのフロアで別の店舗が入っているそのビルは、働いている人も、客に提供しているものも、ビジネスの方法論も、各階で異なるはずです。
中身はまったく違うのにもかかわらず、同じ空間を共有しながら経営が行われていることになります。(発見①)
エントランスに掲げられた看板を見ると、色の濃淡に違いがあることがわかりました。
表面が一部欠けている看板もあるようです。
おそらく最近テナントに入った店舗の看板はまだ新しく、長期間そこで営業している店舗のものは徐々に古くなってきているのでしょう。
そのビルは、中身が違うだけでなく、それぞれの時間軸も違っているのです。(発見②)
そう考えると、ビルという建物は不思議なものだと感じます。
常に時空が混ざりあった状態でそこに存在しているわけですから。(発見③)
ここでは、3つの発見がありました。
内容はさておき、日常にある何の変哲もない建物から何かを抽出できたことに着目しましょう。
ビルをビルとだけ解釈せず、その機能や意味から物事を考えなおす姿勢は、書き手らしい在り方のひとつといえます。
当たり前のことを当たり前と捉えることのない思考が重要で、これこそがまさに目に見えないことを感じ取る力なのです。
物事に対して真剣に向き合えば、目に見えないはずのことが明瞭になってきます。
洞察力や、観察力に繋がる部分でもありますね。
自分が考えた内容が陳腐なものだったとしても、自虐的になる必要も、冷笑する必要も、落胆する必要もありません。
思考を続けることで、より深く、より広く、大きなものが見えてくるでしょう。
■ 参考
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