感覚の幅を上下左右にもつ

今回は、書き手の思考についてご紹介します。

どのように物事を捉えていくかを考えることで、書き手としてどうあるべきかが明確になります。

こちらの記事の内容を発展させて考えます。

目に見えないことを感じとる

まずは、ここで挙げた例をもう一度見てみましょう。

街を歩いている途中、5階建ての商業ビルが目に入りました。

下から見上げていると、ひとつのビルでしかありません。

しかし、それぞれのフロアで別の店舗が入っているそのビルは、働いている人も、客に提供しているものも、ビジネスの方法論も、各階で異なるはずです。

中身はまったく違うのにもかかわらず、同じ空間を共有しながら経営が行われていることになります。(発見①)

エントランスに掲げられた看板を見ると、色の濃淡に違いがあることがわかりました。

表面が一部欠けている看板もあるようです。

おそらく最近テナントに入った店舗の看板はまだ新しく、長期間そこで営業している店舗のものは徐々に古くなってきているのでしょう。

そのビルは、中身が違うだけでなく、それぞれの時間軸も違っているのです。(発見②)

そう考えると、ビルという建物は不思議なものだと感じます。

常に時空が混ざりあった状態でそこに存在しているわけですから。(発見③)

3つの小さな発見をより具体的に文章に実装するために、さらに思考を広げます。

いわば、目に見えないことについて考える作業に入るわけです。

商業ビルから、たくさんのことがわかります。

「入れ替え可能な機能をもっている空間」という点で考えれば、国や地方自治体、企業や団体、家族など、あらゆる共同体に共通しています。

「混在する時間軸」で考えれば、共同体はもとより、古民家の隣に新築の家が建ったり、中古と新品が隣りあって販売されていたりと、新旧が同時に存在する状況にも適応できます。

これらを個人に投影するとしたら、脳に保存される記憶のようでもあり、人間そのものを表しているようでもありますね。

例として扱ったビルの考察は、真新しいものではありません。

むしろさんざん語りつくされ、すっかり手垢がついてしまっているでしょう。

しかし、書き手が着目すべきは内容ではありません。

目に見えないことを考えるときは、感覚の幅を意識しましょう。

何の変哲もないことが、抽象的な概念へと開いていく感覚。(上方向)

見抜いた本質を、他の物事に適応させる感覚。(左右方向)

開いた概念が、個人の実感に戻ってくる感覚。(下方向)

このように、感覚の幅を上下左右にもつことが重要です。

この幅をワイドに保っていれば、書き手らしく思考できるようになります。

例に挙げたビルはもとより、「子供向け番組」を大人として批評することも、「哲学で語られる内容」を噛みくだいて実感することも可能です。

当たり前を当たり前としか捉えられない人が冷笑する物事を、とても知的に考察できるようになるのです。

感覚の幅が広がっていくにつれ、思考の質も向上していきます。

文章に役立てることができるのはもちろん、書き手の在り方を確立させることにも繋がります。

書き手である自分を意識しながら、思考を続けましょう。

■ 参考

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