会話文には「揺らぎ」がある
日常生活での会話に比べると、「会話文」はどうしても不自然になってしまいます。
そもそも「書き言葉」と「話し言葉」を比べること自体がナンセンスといえるため、これは致し方ないことでもあります。
ただし書き手は、会話文の「不自然な印象」を自覚した上で、そこにリアリティをもたらすように努力しなければなりません。
少しでもリアルな会話に近づけるために、例をみながら考えていきましょう。
例
「人の目が気になってしまって、なかなか自分から行動できません」
ここに書かれた内容は、悪い意味で「書き言葉らしい会話文」です。
まるで、質問投稿サイトへの書き込みのような筆致ですね。
日常生活に飛び交う会話は、もっと不安定なものです。
伝えたい内容を「言葉の過不足なく流暢に伝える」など、滅多にありません。
実際には、順序が前後したり、言葉が淀んだり、なにかを言い落としたりしながら、相手に情報を伝えるのです。
このような「揺らぎ」が生じるなかで、表情や声色、身体の動きなどで補完しながら、会話が成立するわけですね。
書き手は、この「揺らぎ」に注目すべきです。
会話文を書くときには、「揺らぎ」を再現しなければ、より不自然になってしまいます。
このことを意識しながら、例文を書きかえてみましょう。
例
「グチグチ考えちゃうタイプなんですよ。人に嫌われるんじゃないかってね」
あくまで一例ではありますが、より会話文らしくなったのではないでしょうか。
前述した例に比べると明らかに良くなっています。
もちろん、話し言葉を完全再現できたわけではありません。
冒頭に書いたように、「会話文」と「実際の会話」は別物で、実際の会話と同等の質にはなり得ないのですから。
上記の例文にも、どこか不自然な印象は感じます。
しかし、実際の会話にみられる「揺らぎ」を文章化したことによって、少しは近づくことができました。
カッチリと過不足なく伝えようとするのではなく、会話にある揺らぎを表現したことで、「会話文」として読めるレベルに達したのです。
あえて不安定な書き方をすれば、「書き言葉特有の不自然さ」が薄まります。
結果として、そこにリアリティをもたらすことができるのです。
したがって、会話文を書くときには通常の文章セオリーから逸脱してみましょう。
■ 参考
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