小説の執筆に「バーチャル・リアリティ」の概念を取り入れる
主観の扱い方について、こちらの記事でご紹介しました。
書き手の主観と、登場人物の主観。
これらを区別した上で、重要になるのは「登場人物の主観」ですね。
しかし、このことを頭で理解できたとしても、使いこなすにはコツが必要です。
今回は、登場人物の主観を扱うための根本的な考え方についてご紹介します。
この記事のタイトルに違和感を覚えた人も多いでしょう。
バーチャル・リアリティ、つまり仮想現実ですね。
バーチャル・リアリティ
バーチャル・リアリティ(英: virtual reality)とは、現物・実物(オリジナル)ではないが機能としての本質は同じであるような環境を、ユーザの五感を含む感覚を刺激することにより理工学的に作り出す技術およびその体系。
VR(virtual reality)と称したほうが、私たちには馴染み深いかもしれません。
このテクノロジーは、いまや家庭用ゲーム機にも取り入れられていますね。
しかし今回は、SF作品を描こう、という内容ではありません。
登場人物の主観を扱うにあたって、もっとも近いのは「バーチャル・リアリティの感覚」です。
この感覚や考え方を小説の執筆に取り入れることをテーマに、書き進めていきます。
引用文を抜粋して、もう一度読んでみます。
『現物・実物(オリジナル)ではないが機能としての本質は同じであるような環境を、ユーザの五感を含む感覚を刺激することにより理工学的に作り出す技術』
もしこれが「理工学的」ではなく、「文芸的」や「人文学的」であれば。
この文章はまさに、小説のことを指すのではないでしょうか。
そもそも、小説とはこういうものです。
音や映像がないことはもちろん、においや味、触った感覚もありません。
しかし読み手は、小説を読むことでそれらを想像することができます。
ぱらぱらとページをめくっていくだけで非日常を擬似体験できるのです。
書き手は、疑似体験を提供する側です。
まるでバーチャル・リアリティの世界にいるような感覚を、読み手に与えなければなりません。
言いかえれば、見えないヘッドセットを読み手に装着させるわけですね。
そして、これこそが登場人物の主観を描くことなのです。
登場人物の主観は、その世界独自のものです。
読み手がそこにどっぷりと浸かるには、「書き手の主観」から距離をとらなければなりません。
それは同時に、「登場人物の主観」を尊重することでもあります。
主観の区別がイマイチ理解できない場合は、読み手にヘッドセットを装着させることをイメージしましょう。
バーチャル・リアリティのクリエイターになった気分で世界を構築する。
このことは、登場人物の主観に重きをおいたリアルな小説を執筆することにもつながります。
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