「一風変わった表現」を作る
エキセントリックな言葉の組み合わせは、読み手の関心を引きます。
今回は、一風変わった表現を作るための方法をご紹介します。
やり方はさまざまですが、なかでも今回は「普通に語られるはずの内容を独特に描く」というアプローチで考えていきます。
これは書き手の感性にかかわらず、ロジカルに成立させることができる方法です。
完成させるまでには、大きく分けて3つのステップが必要です。
異質な言葉を選ぶ
最初のステップは、異質な言葉を選ぶ作業です。
上の記事で完成した言葉をもとに考えてみましょう。
● 会いたい海辺
● 風が吹く人
● 彼女の音
● 食べたい秘密
● 青いパンケーキ
ここでのポイントは、物語との相性を考えることです。
相性が悪ければ、物語の流れとの整合性をとることが難しくなります。
ただし、相性が良すぎた場合も、流れに沿うだけの要素になってしまいますね。
これらのバランスをとるべく、選定するときは妥協せずに、とことん突き詰めましょう。
今回は例として、「食べたい秘密」を活用することにします。
言葉の意味を掘り下げる
次のステップは、言葉の意味を掘り下げる作業です。
ここでの目的は、選定した言葉をどのように組み込むかを考えることです。
選定した言葉に対して、いかに真剣に向き合えるかがポイントですね。
言葉そのものを分解して、意味や使い方を考えることはもちろん、違う方向へと意味を開いていくのも良いでしょう。
類語や近い表現、比喩や暗喩などを含めて、それぞれが結びつく点を探します。
● 「食べたい」
口に入れたい、飲みたい、欲しい
取り入れたい、栄養を吸って排したい など
● 「秘密」
内密、隠し事、プライバシー
浮気や不倫、恥ずかしい過去、コンプレックス など
ここであぶりだしたのは、それぞれ独立した「点」です。
点と点を「線」としてつなげて、骨格を決めていくのです。
ここでは、次のような筋をもとに構築するとしましょう。
● 「食べたい」
⇒ 栄養を吸って排したい
● 「秘密」
⇒ 恥ずかしい過去
これらの解釈を、強引にこじつけます。
「恥ずかしい過去は、水に流したいものだ」
「しかし今の自分を形成するものであることに変わりはない」
「プラスに働いたところだけをとって、ほかの部分は捨て去ってしまおう」
この段階で、多少の無理が出てしまうことは仕方ありません。
強引にこじつけた解釈が、後ほどその効果を発揮してきます。
つじつまを合わせてまとめる
最後のステップは、まとめる作業です。
言いかえれば、内容のつじつまを合わせていくのです。
前項でこじつけた内容を、もう一度見てみます。
「恥ずかしい過去は、水に流したいものだ」
「しかし今の自分を形成するものであることに変わりはない」
「プラスに働いたところだけをとって、ほかの部分は捨て去ってしまおう」
これだけ見ると、いたって普通の内容ですね。
独特なものとして描くには、もう少し工夫が必要です。
その工夫のひとつとして、最初に選んだ「異質な言葉」を活用することがポイントです。
次のような書き出しであれば、読み手はどのように感じるでしょうか。
『僕には、食べたい秘密がある』
読み手の頭には、疑問が浮かぶでしょう。
その疑問を解消すべく、物語を読み進めていくはずです。
書き手は、ステップをさかのぼるようにこれを明かしていきます。
● 「秘密」= 恥ずかしい過去
⇒ 誰にも知られたくないことを考え、描く。
● 「食べたい」= 栄養を吸って、排したい
⇒ ポジティブなものを栄養、ネガティブなものを排泄物として対比させる
これらを上手くまとめることができれば、ありきたりな内容にオリジナリティをもたらすことができます。
作るときのポイント
今回ご紹介した方法には、各所に重要なポイントがありました。
ひとつだけ強調するとしたら、2つめのステップでの強引な解釈です。
解釈の幅が広すぎると納得感が薄れてしまい、せますぎるとありきたりな内容になってしまいます。
もちろん、書き手からすれば「オリジナリティ」であっても、それが読み手に伝わらなければ意味がありません。
つまり、その尺度がとてもあいまいなのです。
書き手は、多少の強引さをもちながらも、整合性をとることが大切ですね。
読み手にどう伝わるかを意識しながら、解釈の幅のバランスをとっていきましょう。
■ 参考
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