【三人称の書き方】一元視点型
今回は一元視点型についてご紹介します。
同じ三人称でも、完全客観型や多元視点型とはまた違った書き方をします。
突然ですが、「主人公A」がいたとしましょう。
一人称小説であれば、主人公Aは「私」「僕」「俺」として描くことになり、視点も固定されますね。
この「私」「僕」「俺」を「主人公A」に置きかえたのが、三人称の一元視点型となります。
メリットは、一人称に近い書き方で三人称小説の手法を用いることができるということです。
語り手は、限りなく主人公に近いところで物語をすすめることになります。
そのため三人称小説でありながらも、主人公の心情を直接的に描写することができます。
同時に、三人称小説らしい客観性も兼ね備えています。
主人公の視点で物語を進めると同時に、主人公が知らない情報を読み手に提示することだって可能です。
誤解を恐れずにいえば、三人称の一元視点型は、自由度が高い一人称小説と捉えることができますね。
ただしデメリットというわけではないですが、書き手は主人公との距離感に気をつけなければなりません。
一元視点型は、完全客観型や多元視点型よりも、主人公との距離が近くなります。
この特性は先述のようなメリットをもたらしますが、その一方で次のような事態を引き起こす可能性があります。
「心地よい」「爽やかな」と感じたのは、一体誰なのでしょう。
「気持ちは沈んだまま」なのに、矛盾しているように感じますね。
例文では、「三人称的な書き方」と「一人称的な書き方」を混同しています。
そのため、主人公との距離感がおかしくなっているのです。
あくまで一例ですが、原文にあった余分な感情表現を排除してみました。
文章を通して、「気持ちは沈んだまま」というネガティブな感情で統一されています。
距離感がめちゃくちゃになって読み手を惑わせるくらいなら、こちらのほうが良いのではないでしょうか。
共通していえることですが、小説の書き方は論者によって解釈が異なる場合が多々あります。
一元視点型についても、「本来は視点変更ができる」「主人公との距離を一定に保つ必要はない」など、さまざまな説があります。
形式上・便宜上の細やかな枠組みも大事ですが、ここではこれ以上説明しません。
書き手として大事なのは、一元視点型の特性をどのように活かすかです。
あえて一人称ではなく、三人称で書こうとした理由があるはずです。
そうしたアイディアを大切にしながら、一元視点型でなければ実現できないような作品を書きましょう。
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