危機的な状況を作りだす
今回は、危機的な状況の作り方について考えます。
スリリングな場面展開は物語の読みどころのひとつですね。
書き手がこれを扱うとすれば、構造から考える必要があります。
わかりやすい例は「時限爆弾」が出てくる物語です。
時限爆弾が起動すれば、登場人物は解除するべく奔走するでしょう。
タイムリミットに迫られる様子は、まさに危機的な状況ですね。
書き手がこの様子を描くとき、次に挙げる3つの要素を設定しなければなりません。
● 危機を設定する
● 最悪の結果を設定する
● タイムリミットを設定する
この3つを意識しながら物語を構築すれば、危機的状況を作りだすことができます。
具体的にあてはめながら考えていきましょう。
「時限爆弾を仕掛けた」との連絡が本庁にあった。
これは、危機が迫っていることを知らせるための要素です。
シチュエーションの土台となる部分であり、爆弾が仕掛けられたことを説得力をもって明示することがポイントですね。
もしも爆発すれば、この工業地帯はたちまち火の海になる。
危機がもたらす被害の最大値を読み手に示すための要素です。
爆発の範囲がどの程度にまで及ぶのかを「できる限り最悪の結果」で想定させます。
被害が大きければ大きいほど、展開はスリリングになります。
犯人は、午後三時までに100億円を入金するよう要求してきた。
この要素で、最悪の状況が起こりうるまでの時間を読み手に示します。
爆発する時間の設定は、物語に流れる時間を定めることにもつながります。
登場人物は、このタイムリミットをもってさまざまな対策をとるのです。
実際にはもっとさまざまなことを描くでしょうから、これらは最低限の要素でしかないでしょう。
もちろん、必ずしも3つの要素を明文化する必要はなく、登場人物がおかれた状況だけで示すことも可能です。
書き手がおさえておくべきは、3つの要素によって物語の大枠が決まるということです。
どれかが欠けてしまうと、読み手に与える「スリル」が足りなくなるどころか、危機的な状況として成立しないことも考えられます。
3つの要素のなかで整合性がとれるように場面を展開させていけば、危機的状況は比較的かんたんに作りだすことができるのです。
これらの要素は、時限爆弾を描くためだけに存在するわけではありません。
ほかのシチュエーションにも幅広く応用できます。
● 危機
⇒ 今にも漏れそうなほど、激しい便意を感じている
● 最悪の結果
⇒ 職場で漏らすと、たちまち笑いものになる
● タイムリミット
⇒ トイレにたどり着くまであと少し
時限爆弾のように、日常で見かけないものだけが危機的な状況をもたらすわけではありません。
上記のように、身近なところでも十分に成立します。
物語に危機的な状況を演出するには、構造で考えることから始めましょう。
たった数行の文章で闇雲に演出しようとしても失敗する確率が高くなるだけです。
3つの要素をもとに、それぞれの整合性をとりながら物語を構成し、詳細を具体的に描いていくことで危機的な状況が成立するのです。
読み手を引きこむような、スリリングな場面を演出していきましょう。
■ 参考
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