【小説の書き方】現在の語尾に「~た」を使う理由【疑問解消】
小説を書き始めたとき、素朴な疑問が浮かびました。
現在のことを書いているのに、なぜ「~た」を使うのか。
言い切る意味での「~だ」であれば、感覚的に納得できます。
しかし、今起きている出来事を書くのに「~た」を使ってしまうと、それが”過去のことになる”ような気がしたのです。
物語全体が「記憶の回想」である場合は別にして、直線的な時間を扱うには語尾の「~た」が不自然に感じました。
それであれば語尾には「~る」や、「体言止め」を使ったほうが適切だと考え、書き直したこともあります。
しかし少し考えてみれば、「~た」を使う理由は単純なものでした。
同じ疑問を抱いている方のために、私の見解をご紹介します。
「~た」=「過去形」ではない
英文におきかえて考えてみましょう。
苦手な人もいるかもしれませんが、きっとこちらのほうがわかりやすいはずです。
例
● 僕はピアノを弾く。
I play the piano.
● 僕はピアノを弾いた。
I played the piano.
時制を過去に変えてみると、当然、語尾は「~た」になります。
しかし「~た」が表しているのは、「過去のこと」だけではありません。
現在の状態についても「~た」で表現することができるのです。
「~た」は完了形にも使える
現在の語尾に「~た」を使うのは、それを過去形として捉えているからではありません。
「~た」という語尾は、完了形としても使えるからです。
引き続き、英文におきかえて考えましょう。
例
● 僕はピアノを弾いた。
I have played the piano.
中学英語でいうところの「現在完了形」ですね。
日本語にすると同じ「弾いた」であっても、意味や指し示す箇所が少し変わっています。
例文で表現しているのは、ピアノを弾いた「状態」です。
表面上は過去を表しているように見えますが、時制としては「完了した状態」を表しているのです。
英語の勉強をするわけではないので、これについて深く考える必要はありません。
ただし、意味している内容が過去形だけではないということは覚えておきましょう。
文の書きかえに役立つ
この知識から得られるは、「~た」を使う理由だけではありません。
語尾に変化をつけたい場合にも有効活用できます。
自分の文章に同じ語尾が多いと感じた場合、「~る」「~た」「~だ」などを使い分けながら修正するはずです。
そのときやみくもに変えるのではなく、語尾の意味を考えながら書きかえられるのです。
例
● 僕はピアノを弾き終えた。
I have finished playing the piano.
完了形として「~た」を使ったのであれば、上記のように表現することもできます。
「僕はピアノを弾いた」が文意としてぼやけていると感じたときに、より詳しく伝わるように書きかえられるわけです。
もちろんこのとき使っているのは完了形ですから、「僕はピアノを弾く」にはなりえません。
演奏中の心境を描くのであれば「ピアノを弾いている」になり、回想シーンなどで過去進行形を使うのであれば「僕はピアノを弾いていた」とすれば良いのです。
つまり、語尾の意味を意識することは文章のブラッシュアップにつながるのです。
書くたびに英文に訳したり、文法について難しく考える必要はありませんが、語尾をないがしろにすべきでないことは確かです。
語尾でリズムを整えることも重要ですが、語尾の意味を考えることも同じくらい重要です。
散漫に書くことなく、語尾が意味する内容を意識しながら執筆しましょう。
■ 参考
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