文の順番がもたらすリズム【文章構造からの工夫】
文章を読みやすくするためには、リズムを意識しなければなりません。
抑揚をつけたり、あえて単調にしたりなど、書き手はさまざま工夫をします。
今回はこの工夫の仕方について考えましょう。
文章のリズムは「語尾の変化」だけでなく、「文の順番」によっても操作することができます。
「語尾の変化」では不十分
まずは例文を見てみましょう。
例
後半の苦しい時間、僕は必死にボールを追いかけていた。
踏ん張りのきかなくなった両脚が、相手になだれ込んだ。
レッドカードは唐突だった。
このプレーが「悪質なタックル」とみなされ、僕はピッチを後にした。
この例文では、「た(だ)」が連続していますね。
単調なリズムを嫌った書き手が、語尾を変化させることで解消を試みたとしましょう。
例
後半の苦しい時間、僕は必死にボールを追いかけていた。
踏ん張りのきかなくなった両脚が、相手になだれ込む。
唐突なレッドカード。
このプレーが「悪質なタックル」とみなされ、僕はピッチを後にした。
「た」の連続を避けつつ、「体言止め」を使うことで、単調なリズムは解消されました。
しかしこれほど短い文章であるにもかからわず、どことなく散らかっている印象を受けます。
語尾を変化させたところで、文章が読みやすくなるわけではないのです。
その理由について、次項で詳しく見ていきましょう。
表面にあるリズムの効果は限定的
語尾を変化させる工夫は、書き手として心がけるべきポイントのひとつです。
その効果を否定するわけではありませんが、広範囲にわたって使える手法ではないのです。
前項の例文を、もう一度見てみましょう。
例
後半の苦しい時間、僕は必死にボールを追いかけていた。
踏ん張りのきかなくなった両脚が、相手になだれ込む。
唐突なレッドカード。
このプレーが「悪質なタックル」とみなされ、僕はピッチを後にした。
時系列にそってコンパクトにまとめられてはいますが、すんなりと飲み込むことができません。
なぜかというと、文の順番に問題があるからです。
読みやすい順番で書かれていなければ、どれだけ語尾を変化させても「付け焼刃の工夫」にしかなりません。
もっと広範囲に作用させるために、根本的なところを工夫していきましょう。
読みやすくするための順番
あえて語尾は変化させず、順番を意識して書き直してみましょう。
例
レッドカードは唐突だった。
後半の苦しい時間、僕は必死にボールを追いかけていた。
踏ん張りのきかなくなった両脚が、相手になだれ込んだ。
このプレーが「悪質なタックル」とみなされ、僕はピッチを後にした。
冒頭に「印象的な文」や「内容を引っ張る文」をもってきました。
語尾は単調なままですが、これだけでもスムーズに読むことができるようになったはずです。
実はこの例文、「リーダー」と「フォロワー」の概念を使って書き直したものです。
文がもつ意味を考えながら構造的に並べかえることで、読み手の理解をサポートします。
理解のスピードが早まれば、読み手は流れるように文章を追うことができるはずです。
結果として、文章に読みやすいリズムがもたらされるのです。
書き手がリズムを考えるときは、文の順番にも工夫を凝らさなければなりません。
読みやすさを考えた文の順番は、文章全体にリズムをもたらす源流となります。
書き手は表面上の工夫だけでなく、構造的な視点からのリズムをもたらしていきましょう。
■ 参考
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