文の順番がもたらすリズム【文章構造からの工夫】

2019年11月17日

 

文章を読みやすくするためには、リズムを意識しなければなりません。

抑揚をつけたり、あえて単調にしたりなど、書き手はさまざま工夫をします。

今回はこの工夫の仕方について考えましょう。

文章のリズムは「語尾の変化」だけでなく、「文の順番」によっても操作することができます。

 

 

「語尾の変化」では不十分

まずは例文を見てみましょう。

 

後半の苦しい時間、僕は必死にボールを追いかけていた。

踏ん張りのきかなくなった両脚が、相手になだれ込んだ。

レッドカードは唐突だった。

このプレーが「悪質なタックル」とみなされ、僕はピッチを後にした。

 

この例文では、「た(だ)」が連続していますね。

単調なリズムを嫌った書き手が、語尾を変化させることで解消を試みたとしましょう。

 

後半の苦しい時間、僕は必死にボールを追いかけていた。

踏ん張りのきかなくなった両脚が、相手になだれ込む。

唐突なレッドカード。

このプレーが「悪質なタックル」とみなされ、僕はピッチを後にした。

 

「た」の連続を避けつつ、「体言止め」を使うことで、単調なリズムは解消されました。

しかしこれほど短い文章であるにもかからわず、どことなく散らかっている印象を受けます。

語尾を変化させたところで、文章が読みやすくなるわけではないのです。

その理由について、次項で詳しく見ていきましょう。

 

 

表面にあるリズムの効果は限定的

語尾を変化させる工夫は、書き手として心がけるべきポイントのひとつです。

その効果を否定するわけではありませんが、広範囲にわたって使える手法ではないのです。

 

前項の例文を、もう一度見てみましょう。

 

後半の苦しい時間、僕は必死にボールを追いかけていた。

踏ん張りのきかなくなった両脚が、相手になだれ込む。

唐突なレッドカード。

このプレーが「悪質なタックル」とみなされ、僕はピッチを後にした。

 

時系列にそってコンパクトにまとめられてはいますが、すんなりと飲み込むことができません。

なぜかというと、文の順番に問題があるからです。

読みやすい順番で書かれていなければ、どれだけ語尾を変化させても「付け焼刃の工夫」にしかなりません。

もっと広範囲に作用させるために、根本的なところを工夫していきましょう。

 

 

読みやすくするための順番

あえて語尾は変化させず、順番を意識して書き直してみましょう。

 

レッドカードは唐突だった。

後半の苦しい時間、僕は必死にボールを追いかけていた。

踏ん張りのきかなくなった両脚が、相手になだれ込んだ。

このプレーが「悪質なタックル」とみなされ、僕はピッチを後にした。

 

冒頭に「印象的な文」や「内容を引っ張る文」をもってきました。

語尾は単調なままですが、これだけでもスムーズに読むことができるようになったはずです。

 

実はこの例文、「リーダー」と「フォロワー」の概念を使って書き直したものです。

 

文章に「リーダー」と「フォロワー」を割り当てる【文がもつ意味】【担う役割】

 

「文頭」で内容を引っ張る【書くポイント】【並べかえと書きかえ】

 

文がもつ意味を考えながら構造的に並べかえることで、読み手の理解をサポートします。

理解のスピードが早まれば、読み手は流れるように文章を追うことができるはずです。

結果として、文章に読みやすいリズムがもたらされるのです。

 

書き手がリズムを考えるときは、文の順番にも工夫を凝らさなければなりません。

読みやすさを考えた文の順番は、文章全体にリズムをもたらす源流となります。

書き手は表面上の工夫だけでなく、構造的な視点からのリズムをもたらしていきましょう。

 

■ 参考

Posted by 赤鬼