だれ場について【読み手の達成感】【関心をもたせる】
物語の最初から最後まで、ドキドキすることはできません。
緊張と緩和がくり返されることで、心が動く振り幅は大きくなります。
物語に「だれ場」を取り入れることで、展開に抑揚がもたらされます。
今回はだれ場について考えていきましょう。
だれ場とは
かんたんにいえば、物語の本筋から外れた場面のことです。
物語の本筋から外れた場面は、読み手からするとヤキモキしたり、イライラしたりする原因となります。
あるいは「どうでもいい」と感じたり、「知ったこっちゃない」と思ったりもするでしょう。
だれ場は、読み手のネガティブな心境を作り出すことで、物語をよりおもしろくすることができます。
もともとは落語や講談などで使われていた言葉のようですが、文学であっても「だれ場」の概念は存在しています。
エンタメ作品に多く見られますが、純文学であっても取り入れられています。
次項から詳しく見ていきましょう。
だれ場の効果
前項にあったように、だれ場は読み手にネガティブな心境をもたらします。
本来あるべき物語の進行を遅らせるわけですから、当然ですね。
実用文であれば絶対にNGですが、小説ではこれが良い方向に作用します。
だれ場を取り入れれば、読み手の達成感を誘発することができるのです。
例
① 憧れの人に声をかけてみよう。
② 憧れの人と話すことができた。
ストレートな展開を書くのも悪くはありません。
しかしここでは読み手の心の動きを利用して、カタルシスを演出してみましょう。
例
① 憧れの人に声をかけてみよう。
② いや、やっぱりダメだ。
③ 今度こそ、声をかけてみよう。
④ またダメだった。
⑤ ついに覚悟を決めた。
⑥ 憧れの人と話すことができた。
読み手は「どのように声をかけるのか」「その人となにを話すのか」に興味が沸くはずです。
そのことが描かれている内容に対して、達成感をもって目を通すでしょう。
最終的にたどり着くところは同じであっても、書き手が意図して物語を遅らせることで、より刺激的な場面になるのです。
これこそが、だれ場を取り入れることによって期待できる効果です。
明確な意図をもって設定する
だれ場を書くとはいえ、書き手自身が手を抜いてはいけません。
ページ数や文字数を稼ぐために散漫に書くのでは、だれ場の効果は得られないでしょう。
だれ場は、読み手により大きな関心をもってもらうためのものです。
しつこいは「焦らし」や「遅延」は、読み手を退屈させ、本当に関心をそぎ落とすことにもつながりかねません。
したがって書き手は、明確な意図をもってだれ場を設定する必要があります。
「セリフを強調したい」だったり、「場面に抑揚をつけたい」だったりと、その目的をしっかり見据えて書くべきです。
物語に良い影響をもたらさなければ、だれ場を設定する意味はありません。
戦略的にだれ場を作って、読み手に「もっと読みたい」と思わせるようにしましょう。
■ 参考
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