主語につかない「は」と「が」

 

主語につく格助詞といえば、格助詞「は」と「が」ですね。

「私は~です」「これが~です」といったように、その言葉を主語として認識できるのは、これらの格助詞がついているおかげです。

 

しかし「は」と「が」は、必ずしも主語につくわけではありません。

 

 

 

例文

● 私はお酒が好きだ。

● 私が好きな飲み物は、お酒だ。

● 医者によれば肝臓は悲鳴をあげているようだが、お酒がやめられない。

 

4つの文を見比べてみましょう。

で示したのは、主語になる言葉です。

一方、で示したのは、「は」「が」がついていながら主語となっていない言葉です。

 

このように、「は」と「が」という格助詞は、主語ではない言葉につく場合もあるのです。

これを理解した上で、次の文を読んでみましょう。

 

 

例文
タバコは、その健康被害は懸念されるが、優秀なコミュニケーションツールであることは確かだ。

 

この文の主語は、どこにあるでしょうか。

 

まず、「懸念される」についている「が」は逆説を示しているので、除外しましょう。

そうなると、「タバコは」「健康被害は」「コミュニケーションツールであることは」のいずれかです。

主語は、おそらく「タバコ」の部分ですね。

 

おそらくと予防線を張ったのは、これが学者のなかでも議論を生む問題であるからです。

たとえばこの文を読んでみましょう。

 

● ゾウは鼻が長い

 

この文章の主語は、「ゾウ」でしょうか。

それとも、「鼻」でしょうか。

かんたんに断言することはできないのです。

 

 

日本語の文章構造は、主語があいまいになりやすい性質をもっています。

細かい議論は専門家にまかせるとして、書き手に必要なのは、この性質を理解して書くことです。

 

特に、複雑な構造の文章を書くときには、主語があいまいになりがちです。

主語につかない「は」と「が」があることを認識していれば、本来強調すべき主語を明確にしやすくなるのです。

日本語特有の性質を理解した上で、それを意識しながら文章を組み立てましょう。

 

 

 

Posted by 赤鬼