「やりとりする場面」をビジネスの取引として描く

物語では、登場人物同士が会話をしたり、肉体的な接触をしたりと、さまざまなやりとりが行われますね。

このやりとりを描くということは、言いかえれば、人間がコミュニケーションをとる様子を描くことです。

だからこそ書き手は、何らかの意図をもってこれを描くべきです。

そこで今回は、とある考え方を用いてアプローチしみましょう。

登場人物がやりとりする様子を、ビジネスの取引に当てはめるのです。

ビジネスの取引は、求められる結果がはっきりしています。

登場人物のやりとりをそこに照らしあわせることで、場面を描く目的や着地点が明確になります。

ビジネスでの取引ですから、最終的なゴールは契約を結ぶことですね。

それぞれが出した条件について、納得したり、譲歩したりしながら、合意に向かって取引を進めます。

当然そこには、権力関係の差が生じてくることもあります。

立場によって有利・不利が分かれた状態で、勝敗を決するように行われる取引も存在するのです。

物語のなかで行われる登場人物のやりとりも、同様です。

惹かれあったり、いがみ合ったり、駆け引きがあったりなど、さまざまな心の動きがあります。

登場人物がやりとりする場面で結ぶべき契約とは、その場面が到達するべき「着地点」です。

それぞれの場面に「着地点」を設定する

たとえば「重い病にかかった夫が、妻に病名を告白する場面」を描くとします。

取引でいうところの結ぶべき契約、つまりこの場面で到達すべき着地点を考えましょう。

この場合は、「病名を告白する」ことですね。

書き手はこのゴールを見据えながら、場面を構築していくわけです。

しかし「告白」といっても、さすがに一筋縄ではいかないでしょう。

次のような設定があったとすれば、どうなるかを考えます。

● 妻は長い期間、専業主婦でいた

● 今年、子どもの高校受験を控えていた

● 夫は生命保険に入っていなかった

絶望的な状況が目に見えるようです。

とくに「生命保険に入っていなかった」という夫の立場が悪くなることは明白ですね。

ここに、登場人物の権力関係の差が生じているのです。

権力関係の差は、場面が着地点に到達するまでのプロセスに障害をもたらします。

スムーズに契約にこぎつけることができない(着地点にたどり着けない)状況は、登場人物の葛藤にもつながるのです。

そこに表れる人間模様は、ビジネス取引の場で行われる駆け引きに似ていますね。

ビジネスの取引にたとえながら考えることで、目的や着地点が明確になり、場面の在り方がはっきり見えてきます。

心理描写も濃密かつコンパクトになり、結果として構築しやすくなるのです。

今回はビジネスの取引にたとえて考えましたが、本質をとらえてさえいれば、どのようなアプローチでもかまいません。

登場人物同士のやりとりを描くときに、参考にしてください。

■ 参考

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