「誰も指摘していないこと」を探す

 

今回は、「新たな概念」を創りだすことについて考えます。

新たな概念の創造は、これまでの書き手がやってきた仕事のひとつであり、もっとも書き手らしさを感じる在り方でもあります。

 

もちろん、かんたんに実践できるようなことではありません。

考えるときのポイントとしては、「誰も指摘していないこと」に目を向けるのです。

もしもこれを表現することに成功すれば、書き手として高い評価を得ることになるでしょう。

 

 

わかりやすい例は、「草食男子(草食系男子)」という言葉です。

この言葉が生まれてからは、恋愛のアプローチに対して特定の傾向をもった人々をすぐにイメージできるようになりました。

 

とはいえ、草食男子(草食系男子)と呼ばれる性格をもった人は、昔から存在していたはずですし、大多数の人々が行動の傾向をそれとなく把握していたはずです。

この性格や行動が、象徴的に言語化されたことによって、議論として扱いやすくなり、結果として世間に大きく取りあげられたのです。

 

 

発案者は、深澤真紀さんという書き手です。

コラムニストや編集者、情報番組のコメンテーターなど、各所で幅広く活躍されている方ですね。

彼女のように、誰も指摘しなかったことを提言できれば注目を集めることは間違いありません。

 

 

この例をもって着目すべきは、社会の流れを感じとる力です。

ヒトやモノの様子や、特定の事象、そこから見えてくる傾向などを感じとり、言語化する。

このプロセスを経て思考することが重要なのです。

 

 

こちらの記事では、社会問題の扱いについてご紹介しましたね。

■ 「社会問題」には罠がある

 

既存の社会問題を小説に投影する場合、その必然性を確保したり、物語として書く意味を見出すことが必要です。

書き手が「社会問題」を扱うときは、罠にかからないよう十分に気をつけなければなりません。

ただし、誰も指摘していない問題を取りあげた場合には、罠にかかることを恐れずに済むわけです。

 

 

とくに小説であれば、「草食男子(草食系男子)」のように、かならずしもピンポイントで言語化することを求められるわけではありません。

誰も指摘しなかったことをすくい上げ、ロールモデルとして描くだけでも十分に評価されるでしょう。

今までになかった考え方や捉え方、新鮮な価値観を物語のなかで具体的に表現すれば、それは「読まれる作品」になるのです。

 

 

書き手は、既存の概念に固執する必要はありません。

言葉を操るはずの書き手が、言葉に縛られてしまうことはできる限り避けたいですね。

かといって、本当の意味で「真新しい概念」に執着する必要もありません。

なぜなら、それはもはや発明の領域に踏み込むことになり、敷居がとてつもなく高くなってしまうからです。

 

「皆が実感しているはずなのに大きく取りあげられていないこと」に着目すると、その難しさは緩和されるはずです。

社会の流れを感じとるアンテナを立てながら、誰も指摘しなかったことを探し当てましょう。

 

■ 参考

 

創作

Posted by 赤鬼