【小説の構成】「盛り上がり」を最初に示す【書き出し】

 

最初は「音楽」で考えましょう。

今まで聴いた音楽の中に、”サビ”から始まる楽曲があるはずです。

『世界にひとつだけの花』(SMAP)が良い例ですね。

本来いちばん盛り上がるはずのサビを頭におくことで、楽曲の序盤から聴き手を引き込む構成になっています。

 

この構成は文章の書き方にも応用できます。

詳しく見ていきましょう。

 

 

「読ませどころ」から書く

音楽のサビは、いわば聴かせどころです。

文章では「読ませどころ」となりますね。

読み手をワクワクさせたり、好奇心を刺激したりする内容を、物語の最初にもってきます。

 

もちろん、選び方はさまざまです。

「作品の売りにしたい場面」や「物語にとって重要な場面」、単純に「おもしろい(と思われる)場面」を設けても良いでしょう。

ポイントは、序盤で読み手の心をつかむことです。

サビ始まりの楽曲のように、読み手に「おっ!」と思わせる場面を選別しましょう。

 

 

スタート地点を見極める

読みはじめたと同時に、作品の世界に引き込まれてしまう。

そんな書き出しがあります。

 

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。

(川端康成『雪国』新潮文庫)

 

日本の文学史において、もっとも有名で秀逸な書き出しのひとつです。

読み手ごと異世界(物語の世界)に誘う書き方で、

たとえばこれを「朝起きて」「準備をして」「家を出て」「駅に向かって」「切符を買って」「汽車に乗り込んで」……と、そこに至るまでの日常を時系列に書いたとします。

すると、上記の書き出しの魅力は失われてしまいますね。

 

時系列に書くことが悪いとはいいません。

ただし書き手は、物語のスタート地点を見極める必要があります。

読み手にとって「強いフック」となるところを選び、切り取り、描くことで、物語を編むのです。

構成の考え方としては、やはりサビ始まりの楽曲と同様ですね。

 

 

前フリとして使ってもいい

実のところ『世界にひとつだけの花』では、最初に盛り上がりをもってきているわけではありません。

「序盤で歌われるサビ」は、いわば前フリの役割を担っています。

前フリを受けた流れのなかで通常のサビにつなぎ、落ちサビを経て、最後の大サビでくくられます。

この盛り上がりの変化を感じとりましょう。

 

盛り上がりからスタートしたと見せかけて、そのあとに「さらに大きな盛り上がり」を設ける。

そうすることで読み手の「飽き」を防ぐのはもちろん、構成をもって「物語のおもしろさ」を設けることができます。

 

理屈をわかっていても、実践ではなかなか上手くいかないかもしれません。

しかし書き手がこの構成を知っているかどうかで、文章の書き方や物語の編み方は大きく変わってきます。

自分が読み手の立場になったときも、作者の手法を理解することができます。

自分の作品に「魅力的な構成」を取り入れるためにも、勇気をもってチャレンジしてみましょう。

 

■ 参考

創作

Posted by 赤鬼