【人物を描く】書き手目線での人間観察【観察・想像・創造】
小説で描く人物には、「リアリティ」が求められます。
あえて浮世離れした人物を描くこともありますが、それは「人物を描く力」をすでにもっているからこそ使える手法です。
リアリティのある人物を描くには、普段から書き手の目線で人間を観察することが大事です。
描写力を鍛えるにあたって、これは最良の方法といえます。
人間観察とは「想像」すること
レストランに入ったとき、「食べ方が汚い男性」を見たとしましょう。
その様子から「気持ちが悪い」と感じるのは、あまりにも幼稚ですね。
人間の在り様を端的に決めつけてしまうのは、観察といえません。
行うのはあくまでも「観察」であり、その目的は創作に役立てることです。
誰かの人となりを決めつけるために、人間を観察するわけではありません。
創作に活用するには、人間の様子から表面化していないものを想像することが重要です。
書き手がなにかを想像することで、クリエイティブな領域に踏み入れることができます。
観察から想像へ
まずは「食べ方が汚い男性」を観察してみましょう。
例
● 一心不乱に食べ物を口に掻きこんでいる
●髪はべたつき、ネクタイはよじれ、スーツにはシワが出ている
● 生気のない目をしている
書き手はこの結果をもとに、ありとあらゆることを想像してみます。
例
● その男性は激務に次ぐ激務で、過労死寸前だった
● 気づけば、3日間ご飯を食べていなかった
● ようやく掴んだ食事の時間に「生」のエネルギーを摂取できた
● 彼は母子家庭で育ち、最愛の母親は病に伏していた
● 母の治療費を稼ぐには耐え続けるしかなかった
● 食事を摂ったら、また頑張ろうと意気込んでいる
もちろん、想像したことが本当であるかを確認する必要はありません。
それに創作のためとはいえ、他人を凝視しすぎるのは失礼です。
あくまで「小説で人物を描く」のだとすれば、ディティールはだいぶ整ってきたといえます。
身なりや背丈、顔つきなどは”見たまま”を流用できるため、必要なのは「表面化していないもの」なのです。
その人物が歩んできた人生や性格、今考えていることなど、目には見えないものに考えを及ばせることが大事です。
ただし、逸脱した想像はやめましょう。
あまりにもかけ離れた想像は、観察した様子との整合性がとれなくなり、せっかくのディティールが無駄になります。
あくまで観察したものをベースに、想像を膨らませましょう。
想像から「創造」へ
観察したり、想像したりするのは、あくまで書く前の準備です。
それを創作に落とし込まなければ意味がありません。
「食べ方が汚い男性」をモデルに物語を進めるのなら、職場や家の様子、交友関係、直面する(した)出来事など、詰めなければならないことがたくさんあります。
その作業を通じて、ようやく登場人物にリアリティをもたらすことができるのです。
書き手が物語のなかで「魅力的なキャラクター」に仕立て上げれば、人物を創造したといえるでしょう。
「観察⇒想像⇒創造」のプロセスは、ゼロから人物を描くときには必須となります。
かんたんに実現できることではありませんが、職場や学校、電車の中、街中など、サンプルはそこらじゅうに溢れています。
登場人物を創造するべく、書き手の目線で人間を観察していきましょう。
■ 参考
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