書き手の視点を考える【複眼的なもの】【水平と垂直】
小説を書くときには、書き手なりの視点をもって向き合うはずです。
いわゆる「書き手の視点」ですね。
「書き手の視点」は複眼的なもので、見る角度や距離によってさまざまなものが映りこんできます。
具体的に考えていきましょう。
登場人物と書き手
たとえば物語で「いじめ問題」を描くとしましょう。
この場合は「いじめっ子」と「いじめっ子」、最小でも2人の登場人物を描かなければ成立しません。
それぞれの登場人物の人格はもちろん、関係性や境遇からなにかを描くことは間々あります。
会社での様子なら「上司」と「部下」、男女の恋愛なら「男」と「女」といったように、さまざまな状況にあてはめることができます。
重要なのは、書き手の視点が偏らないことです。
対比に近い関係から物事を描くとき、どちらかが目立つように書くとかえって伝わらなくなります。
複数の登場人物がいるときは、双方の気持ちを汲み取った上で物語に落とし込んでいく必要があります。
すると、関係性から浮かび上がるものを色濃く描くことができます。
文面と書き手
前項の内容は、いわば「物語の世界に肩入れした状態」でのことです。
それ以前に書き手は、作品との距離が近づきすぎないよう注意しなければなりません。
作品との距離を保つことで、書き手は冷静な状態で執筆することができます。
一人称で書かれた小説の場合は、とくに気をつける必要があります。
ピンとこない人は、「日記」で考えるとわかりやすいでしょう。
普段から執筆を意識していない人の日記は、「内容に書かれた自分=書いた本人」で文章が綴られるはずです。
あなたが「書き手」であれば、両者をイコールで結ぶことはないでしょう。
「内容に書かれた自分」から独立した、「文面を見つめるもうひとりの自分」がいるはずです。
この視点や感覚を忘れないようにしましょう。
作品を立体視する
書き手が登場人物を見つめるとき、いわば「水平方向」に視点を切りかえています。
それぞれの人格や立場を考え、そのときの気持ちを汲み取ることで、内容を濃密に描こうとします。
これに対して書き手が文面を見つめるときは、「垂直方向」の視点をもっているといえます。
一定の距離を保ちながら、文面と自分自身を行き来することで、作品が問題なく成立するように調整しているのです。
小説を書くにあたって、どちらの視点もないがしろにしてはいけません。
両方とも、大切な視点です。
自分の作品を読み返したときに「何らかの不足や偏りが生じている」と感じた場合には、書き手の視点が機能していない可能性があります。
水平と垂直、さまざまな方向に目配せしながら視点を使い分け、作品を立体視していきましょう。
■ 参考
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