会話の途中に地の文を入れる

小説では、会話の途中に「地の文」を入れることがあります。

今回はその使い方について、基礎的な部分をご紹介します。

 

まずは、例文を見てみましょう。

 

 

例文

 僕は、意を決して言った。

「土曜日、ご飯を食べに行こう」

彼女は、やさしい笑顔で応えた。

「いいよ。何時にする?」

 

地の文をもって、その場の雰囲気や話者の様子を示す。

いわば、セリフの追加情報であって、もっともスタンダードな使い方ですね。

 

しかしこの使い方については、おそらく素人でもモノにできるのではないでしょうか。

ここで、もう一歩踏み込んだ使い方をしてみましょう。

 

 

原文

 ~僕は、意を決して言った。

「土曜日、ご飯を食べに行こう」

彼女は、少し考えてから応えた。

「いいよ。何時にする?」

 

挿入された地の文では、時間の経過を示すことでその場の様子を伝えています。

これもまた、セリフの追加情報ですね。

決して悪いアイディアではないですが、「ありがちな文言」といわれれば否定しづらいのは事実です。

 

せっかく時間の経過を示すのですから、こういう手法をとってみるのもアリです。

 

 

改善文

僕は、意を決して言った。

「土曜日、ご飯を食べに行こう」

断られたらどうしよう、と僕は思った。

しかし、一度投げてしまったボールがひとりでに跳ね返ってくることはないのは百も承知だ。

僕は、彼女の反応を待った。

「いいよ。何時にする?」

 

随分と長い文が挿入されました。

これはつまり、地の文で時間軸を操っているのです。

 

読み手の目が会話文に触れるとき、物語の世界と現実の世界、双方の時間が同時進行で流れます。

この性質を上手く利用すれば良いのです。

※ 参考 ⇒ 文章で時間軸を調整する

 

 

原文では「少し考えてから」という文言がありました。

改善文では、心理描写を加えながら、あえて明確に言語化せずに時間の経過を表したというわけです。

 

読み手と物語とで共有する時間を意識し、地の文を利用する。

ただ追加情報を示すのではなく、こうした使い方もあるのです。

執筆の参考にしながら、より良い作品を書き上げましょう。

 

創作

Posted by 赤鬼