【一人称の小説】主人公のパーソナリティを知らしめる【外的な要因から】
小説において、主人公のパーソナリティは非常に重要です。
読み手はここに興味をもったり、心酔したりするわけで、「小説そのものの魅力」にもつながる要素といえます。
小説を一人称で書くメリットは、主人公のパーソナリティを濃密に表現することができるところにあります。
書き手として、「人格」「性格」「人となり」をどのように表現してくかについて考えましょう。
地の文では説明できない
三人称で書くのであれば「○○(主人公)は幼少期から内気で……」といったように、主人公のパーソナリティを地の文で説明できます。
実際の執筆ではここまではっきりと書かないにしても、「地の文を使って主人公の個性を知らしめる」という意味では、さほど珍しくない表現方法なのです。
一人称の場合、そうはいきません。
「僕は幼少期から内気で……」とすれば成立しそうにも思えますが、地の文で自己分析するのは悪手です。
理由は単純で、これが許されるのであれば会話文や回想シーン、展開をもって「人物」を描く必要がなくなるからです。
つまり冒頭で示した、「一人称小説のメリット」を捨てることにつながるわけですね。
誤解を恐れずにいえば、一人称小説において「人物」を描かない場合、「一人称で書く理由」も同時になくなってしまうのです。
外的な要因によって規定される
主人公のパーソナリティを読み手に知らせるには、どうすればいいのか。
総じていえるのは、外的な要因がポイントになるということです。
わかりやすいのは、状況に応じた選択です。
外部からもたらされた状況への対応によって、個性は発揮されるものです。
例
モンスターがあらわれた!
A. たたかう
B. にげる
C. 仲間になる
負けん気が強い主人公であれば、「A. たたかう」を選択するでしょう。
自信が足りない主人公の場合、「B. にげる」を選択するのが自然です。
社交的な性格の主人公は、「C. 仲間になる」を選択して一緒に旅を続けようとするはずです。
主人公がどのような選択をするかで、パーソナリティを規定することができます。
露呈する、とまではいわないにしろ、そのときの行動はパーソナリティからの影響をうけることになるでしょう。
書き手はこのことを踏まえてながら様子を描かなければなりません。
会話文の扱いには注意
よりかんたんなのは「会話」を利用する方法です。
読み手は、会話文の様子から主人公のパーソナリティを知ることができます。
例
「今まで何人の女性と付き合った?」
A.「1人だよ」
⇒ 真面目で清純なイメージ
B.「中途半端な関係は除いて、7人くらいかな」
⇒ 奔放な遊び人のイメージ
c.「1人しかいないよ」と、僕は嘘をついた。
⇒ 体裁を気にする秘密主義(?)のイメージ
このように他者を使いながら、主人公のパーソナルな情報を引き出すのです。
いわば「説明的会話文」を利用する例で、一人称小説であってもかんたんに情報を提供することができます。
書き手からすれば楽ですが、やりすぎには注意すべきです。
他者を都合よく配役してしまうと、物語全体がご都合主義に偏ることになります。
そこで完成するのは「出来すぎた物語」でしかなく、すべてが陳腐なものになってしまいます。
創りあげた他者には、それぞれのパーソナリティがあります。
会話文の扱いに注意しつつ、物語の世界を尊重しながら書きましょう。
■ 参考
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