【小説の分類】作品への向き合い方、舵を取る方向【書き手の志】
小説はさまざまな観点から分類することができます。
ジャンルの違いはもちろん、作品全体に染み込ませる要素が「娯楽」か「芸術」でも変わってきますね。
今回は「書き手の志(こころざし)」に重きをおいて、小説を分類してみます。
かんたんにいえば、「どのような作品に仕上げたいのか」ということです。
作品に向き合い、どのように舵を取っていくのかについて考えましょう。
読者に迎合する作品
自分ないし文芸界全体の「読者人口」を増やしたいのであれば、読者に迎合する作品を書くことになるでしょう。
誤解を恐れずにいえば、「売れると見込んで書く作品」です。
そのため、一般的には娯楽の要素が多く盛り込まれるはずです。
個々の読み手に向けて書くというよりも、多くの読者の心に響くよう書くことが求められます。
出版社の側から執筆を依頼された場合、文章の裏に「利益が出る見込み」を潜めておかなければなりません。
金銭のやりとりが生じる契約であれば、当然ながら”多くの読者にウケるもの”が求められます。
創作でなくても、雑誌の企画に参加したり、インターネットの記事を作成したりなども同様です。
あなたが有名人であれば読者から歩み寄ってくれるかもしれませんが、そうでない場合、依頼ありきで書く作品は経済的なメリットが必要とされるでしょう。
双方の望みが合致する作品
「書き手の願望」と「読み手の要望」とで整合性がとれることがあります。
前項のように受注生産的な作品ではありません。
書き手が表現したいことと、読み手が求めるもの。
これらが合致するのが、理想的な作品といえます。
多くの読み手に届けるために、あるいは経済的に自立するためにも、書き手としては目標にすべき状態ですね。
とはいえ、「書き手本人が思うままに表現したことを読み手が求めている状態」を作りだすのは至難の業です。
相応のキャリアも必要になるでしょうし、その過程でいわゆる”ファン”がついてくれなければ成立しません。
「死後に評価された」というパターンは、需要と供給の関係のなかでタイムラグが生じたことになります。
双方の望みが遅延なく合致するよう、目標としてしっかり見据えながら、できるだけ理想の状態に近づけるようにしましょう。
信念をもって表現する作品
ときには「きっと受け容れられないだろうな」と思いながら書く作品もあります。
読み手の批判的なリアクションを予測しつつも、それでも表現しなければ気がすまない。
自分自身のこだわりを裏切ることができず、お金の事情など気にかけない。
いわば書き手なりの信念をもって表現する作品です。
重要なポイントとして考えるべきは、読み手の批判です。
たとえば「差別問題」はその扱いが非常にデリケートで、表現における隠れたタブーのひとつでもあります。
どうしても書き手が差別問題をテーマに表現したいのであれば、突き進んでみるのもひとつの手です。
きっと、その信念を失ってしまうことに耐えられないでしょうから、批判を覚悟しつつも挑戦しましょう。
自由に舵取りできる
実のところ、これまでご紹介した3つの分類は、根幹の部分でつながっています。
しっかり読み手を楽しませて、しっかり売れたい場合は、より多くの読者に迎合するものを目指しましょう。
その上で、自分の表現したい内容との整合性をとることも重要ですね。
もちろんお金は大事ですし、読み手の存在はそれ以上に大事ですが、それもこれも書き手の信念の上に成り立っているべきです。
したがってこれらはまったく別物というわけでなく、「書き手の志」に違いがあることによって差が生じているのです。
創作、とくに小説を書く場合、私たちには「自由」が与えられています。
進むべき方向を決め、最初の舵を取るのは書き手自身です。
志を強くもち、自分の作品と向き合っていきましょう。
■ 参考
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