会話文と地の文とのマッチング
会話文は、いわずもがな「登場人物の発言」を文章にします。
話し言葉を文章に落とし込むわけですから、書き手はいたるところに気を配らなければなりません。
とくに、地の文との筆致の違いには注意すべきです。
佐藤はグラスを手に持ったまま言い放った。
「お前マジうぜえなぁ~」
するとすぐさまそのグラスを口元まで運び、汚れた口内を洗い流すかのように水を流し込んだ。
地の文からは、整然とした印象を受けます。
それに対して会話文は、あまりにも実直すぎる書き方をしていますね。
筆致のバランスが悪く、双方の整合性がとれていません。
会話文だからといって、話し言葉をそのままもってきてはならないのです。
違和感を払拭すべく、書き換えてみましょう。
佐藤はグラスを手に持ったまま言い放った。
「あんた、さすがに鬱陶しいよ」
するとすぐさまそのグラスを口元まで運び、汚れた口内を洗い流すかのように水を流し込んだ。
あくまでも例なので、ほかに良い表現があるのかもしれませんが…
いずれにしても、原文にあった違和感はなくなったはずです。
このように、書き手は「会話文と地の文とのマッチング」をとらなければならないのです。
もちろん、小説はいつだって自由であるべきです。
そうした前提を重要視すれば、原文のような書き方もアリなのでしょう。
ただし、これは作法やルールではなく、ある意味で美的感覚の問題です。
たとえるなら、「上半身はビシッとしたシャツとジャケット、下半身はヨレヨレのトランクスとサンダル」のコーディネートですね。
これをあなたは許容できるのか、というところがポイントです。
もしそれを許容できたとしても、読み手の理解を得られるかはまた別です。
こうして考えると、やるべきことは自ずと見えてきますね。
会話文と地の文、双方の筆致がバラバラにならないよう、意識しながら執筆しましょう。
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