定型文からの距離をはかり、文章を使い分ける
今回は、文章の使い分けについて考えましょう。
文章には、相手に応じた文体があります。
書き手はこれを使い分けなければなりません。
例を見てみましょう。
拝啓 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り厚くお礼を申し上げます。
見てのとおり、これは「挨拶の定型文」です。
ビジネス文書ではお決まりの文言が並んでいますね。
こうした堅い文章は、ビジネスシーンのような堅い場面で活用できるよう、洗練された上で定型化されています。
ネットで検索すれば山のようにヒットするため、必要に応じて活用している人も多いでしょう。
だからといって、このようなフォーマルな文体が100パーセント正しいわけではありません。
冒頭にあったとおり、文章は相手に応じて使い分ける必要があるのです。
① 拝啓 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のお引き立てを賜り厚くお礼を申し上げます。
② 拝啓 ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます。日ごろは大いにごひいきにしていただき、心よりお礼を申し上げます。
③ お世話になっております。いつもお力添えいただき、ありがとうございます。
④ お疲れさま。いつもありがとうね。
①から④と数字が大きくなるにつれ、文章がくだけていきます。
②の文は若干簡略化されているものの、まだまだフォーマルな印象が残っていますね。
ビジネスシーンでの活用には十分に耐えられるでしょう。
③の文になると、すっかりくだけています。
場合にもよりますが、社外宛ての文書としては不適切と判断されるかもしれませんね。
ただし、たとえば直属の上司向けのちょっとしたメールであれば、このくらいの表現がちょうど良いでしょう。
④の文は、ビジネスシーンで考えれば、よほど仲がいい同僚か自分の部下にしか使えません。
家族や友達とのやりとりでは、当然ながら通用するでしょう。
むしろこのくらいフランクな文章でないと、気持ちが伝わらないかもしれませんね。
ここで、それぞれの文の良し悪しを判断するつもりありません。
重要なのは、これらの違いを意識して使い分けることです。
言いかえれば、「定型文からの距離」ですね。
自分の文章がフォーマルな表現からどれほど離れているか、その距離をはかるのです。
何センチとか、何メートルとか、そういう話ではありません。
「定型文から離れれば離れるほどくだけた表現になる」といった、感覚的なものでけっこうです。
これさえわかっていれば、文章のレベルに応じて「かたい⇔やわらかい」をコントロールすることができます。
そうすることで、書き手は、相手に見合った表現であるかを判断できるようになるのです。
これはまさに、「読み手のことを考える作業」でもあります。
定型文からの距離をはかれば、相手に応じた文体を見定めることができます。
読み手に違和感を与えないよう、意識して書き分けましょう。
■ 参考
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