「~たり」を使った表現
今回は、「~たり」を使った表現について考えます。
普段から何気なく使ってしまいがちな表現ではありますが、書き手は気をつけなければなりません。
「~たり」を使った表現には基本ルールがあります。
その理由もふまえて、ご紹介します。
小さい頃、私はピアノを習っていた。
課題曲をなかなか覚えられなかったり、発表会で失敗してしまうなど、私にとっては辛い思い出のほうが多い。
しかし今となっては、ピアノを習っていてよかったと思える。
人前で披露できる特技は、さまざまな場面で私を救ってくれたのだ。
このような使い方は、文法として間違いとされます。
なぜなら、「~たり」は、複数で使う決まりとなっているからです。
書き直してみましょう。
小さい頃、私はピアノを習っていた。
課題曲をなかなか覚えられなかったり、発表会で失敗してしまったりと、私にとっては辛い思い出のほうが多い。
しかし今となっては、ピアノを習っていてよかったと思える。
人前で披露できる特技は、さまざまな場面で私を救ってくれたのだ。
これで、間違いはなくなりました。
なぜ、2回書かなければならないのか。
疑問に思う人もいるでしょう。
主な理由としては、この場合の「~たり」が並列を意味するからです。
試しに、「~たり」を外して書き直してみましょう。
このようになります。
小さい頃、私はピアノを習っていた。
課題曲をなかなか覚えられず、発表会で失敗してしまうなど、私にとっては辛い思い出のほうが多い。
しかし今となっては、ピアノを習っていてよかったと思える。
人前で披露できる特技は、さまざまな場面で私を救ってくれたのだ。
「課題曲をなかなか覚えられなかった」
「発表会で失敗してしまった」
これまでの例文は、それぞれがひとつの塊として、並列に並べられていました。
「~たり」を外して書くと、
「課題曲をなかなか覚えられなかったから、発表会で失敗してしまった」
という意味として読み取れますね。
もちろん、両方とも外して書いていれば、文法としては間違いではありません。
ただし、「~たり」を片方だけ書くとなると、事情は変わってきます。
並列に並べられているのか、もしくは個別の意味の塊なのか、判断がつかないのです。
だからこそ、「~たり」は2回以上続けて使うのが基本ルールとされているわけですね。
これは、話し言葉ではなかなか意識できない部分です。
間違った用法を、そのまま文章にまで落とし込んでしまうこともあります。
書き手の意図をしっかり反映させるためにも、「~たり」を使い方を間違えないよう気をつけましょう。
■ 参考
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