「動き」を弱める動詞の使い方

 

こちらの記事では、文末に動詞を使うことで文章に「動き」を加えられるとご紹介しました。

文に「動き」を加える工夫

ただし、考えなしに動詞を並べるだけでは、その効果を十分に発揮できない場合があります。

 

 

原文

仕事のことで、壁にぶつかっている。

今後の進退について、迷っている。

 

「ぶつかる」と「迷う」、どちらの動詞にも「~ている」が使われています。

この「~ている」は、状態を示す性質をもっています。

そのため、本来得られるはずの「動き」の効果を弱めているのです。

 

 

それだけでなく、原因と結果の関係もあいまいになっています。

内容を整理すると、「壁にぶつかったこと」が原因となり、結果として「進退について迷っている」はずです。

原文では状態を示す表現が並んでいるため、原因と結果が重なっているとも解釈できます。

文末表現を工夫して、これを解消しましょう。

 

 

改善文

仕事のことで、壁にぶつかった。

今後の進退について、迷っている。

 

「ぶつかっている」を「ぶつかった」とすることで、原因と結果の関係が明確になりました。

壁にぶつかった ⇒ 迷っている

現状を伝えるための文なので、二行目はそのまま「迷っている」を使いました。

原文では内容が足踏み状態になっていましたが、少しの工夫で文章に「動き」を加えることができたのです。

 

躍動感を印象づけようと、やみくもに動詞を使ってはいけません。

「~ている」のように、使い方しだいではその効果を弱める場合もあるのです。

読み手のどのように伝わるか、これを意識しながら書きましょう。

 

Posted by 赤鬼