【読まれる恐怖】知らない世界を書くこと【専門家の存在】

 

仕事として文章を書くとき、「知らない世界」に触れなければならない局面が訪れます。

残念ながら、それぞれの分野には「専門家」と呼ばれる人たちがいます。

書き手は専門家に読まれる恐怖と戦わなければなりません。

今回はこの恐怖との向き合い方や戦い方についてご紹介します。

 

 

「専門家」たちが目を光らせる

たとえばライターとして執筆を請け負ったときを考えてみましょう。

雑誌の企画に参加したり、クライアントからテーマが与えられたりしたとき、「自分の知らない世界」に踏み込むことがあります。

政治、経済、芸能、医療、介護、ITなどの有名どころから、コアでニッチな分野まで……幅広い範囲を文章にしなければなりません。

 

各界の専門家は、文章の内容に目を光らせています。

「自分の得意分野」に触れた箇所は、とくに注意しながら読むのです。

 

そこで間違いがあったり、事実誤認があったりすると、すかさず読み手はツッコミを入れたくなるでしょう。

文章の内容はもちろん、書き手としての信用度にもかかわる問題です。

「知ったかぶり」をしている自覚が芽生えたとき、書き手は「読まれる恐怖」と直面することになるのです。

 

 

誠実に誤魔化す

書き手は取材するなり、事前調査するなりして、内容の精度を向上させていかなければなりません。

この「誠実さ」は書き手として当然のことで、精一杯注力すべき部分です。

しかしながら実際、執筆にかけられる時間は限られています。

短い期間で専門家ほどの知識を得ることはできませんから、限界があるのです。

 

そのとき書き手は、悪い言い方をすれば誤魔化しながら書くしかないのです。

とはいえ、ウソを書いたり、都合よく事実をねじ曲げたりしてはいけません。

「その世界を知らないからこそ書ける内容」を書いたり、「自分の知ってる世界と対比させる」ことで質を高めたりと、概要をかいつまんだ上で環境整備をするのです。

したがって「知らない世界」を書くときは、文章の内容を誤魔化すのではなく、自分の武器が使えるフィールドを設定することがポイントです。

 

 

居直り・割り切り・開き直り

このことはライターだけでなく、文章全般にいえることです。

作文や小論文を書くとき、与えられたテーマに書き手が精通しているとは限りません。

小説であっても、登場人物の職業やそれに伴う場面の描写によっては「自分の知らない世界」を扱わなければなりませんね。

そのなかで「居直り・割り切り・開き直り」に転じるタイミングはかならずやってきます。

 

ドラマ『半沢直樹』は、実際に銀行で働く人からすれば「トンデモな場面」が多々あるようです。

しかしこの作品は爆発的にヒットし、広く世の中に受け入れられていますね。

つまり現実にある「正誤」「事実」「実態」は、クオリティや評価とリンクするわけではないのです。

 

書き手は、誠実であることを前提としながらも、「居直り・割り切り・開き直り」のオプションをもっておきましょう。

もちろん内容の質を低下させないためにも、現実世界での「正誤」「事実」「実態」は尊重しなければなりません。

その上で「専門家でない人の目線」でしか伝えられないことがあるはずです。

このバランス感覚をもっていれば、「知らない世界」について書くことができます。

自分の武器を使える環境を整えながら、読まれる恐怖と戦っていきましょう。