【終わりの型】「余韻型」で文章を終わらせる

 

今回は、読後感をもたらすための終わらせ方について考えていきます。

ここでご紹介するのは「余韻型」です。

この型は、書き方に過不足が生じると成立しません。

書き手は方々に気を配りながら、注意して執筆しましょう。

 

 

余韻型とは

余韻型とは言葉のとおり、文章の終わりで余韻をもたらすときに使います。

いわゆる”読後感”を生じさせたい場合には、もっとも適している型といえるでしょう。

この型の特徴は、最後の一文だけで成立させることができるところにあります。

むしろ最後の一文をどう書くかによって、文章全体の出来栄えが大きく変わるともいえます。

 

文章の終わりに余韻をもたらす方法としては、主に二通りのアプローチがあります。

「読み手に想像させる方法」と、「書くはずだった内容を省略する方法」です。

次項から順にご紹介します。

 

 

読み手に想像させる

まずは例文を読んでみましょう。

 

気付けば僕は、いつも彼女を目で追っていた。

あるとき、彼女のほうから話しかけてきた。

「今度の土曜、ご飯食べに行かない?」

またとない機会に怯んだ僕は「予定、確認しておくよ」と答えた。

本当に伝えたかったのはこんなことではなかった。(←余韻の発生)

 

このように、含みをもたせて間接的に伝えるのが余韻型で終わる文章です。

 

ポイントは、裏側に見え隠れするものを読み手に想像させることです。

たとえば最後の文で「本当は予定などなかったのに、突然のデートの誘いに舞い上がって滑稽な返答をした」との旨を書けば、彼女に対する気持ちを読み手に明示することができます。

もしくは「カッコつけてしまった」「即答でOKと返事すればよかった」と書いてもわかりやすいでしょう。

 

そこであえて含みをもたせるように書くことに、この型を使う意味があります。

余韻をもたせる書き方をすることで、文章に「奥行き」や「ふくらみ」が生じ、読み手はその内容を立体的に読み取るはずです。

これが余韻型の主なねらいです。

 

 

書くはずだった内容を省略する

別のアプローチで考えてみましょう。

 

気付けば僕は、いつも彼女を目で追っていた。

あるとき、彼女のほうから話しかけてきた。

「今度の土曜、ご飯食べに行かない?」

またとない機会に怯んだ僕は「予定、確認しておくよ」と答えた。

 

「僕」の返答が本心ではないことは文脈から見てとれますね。

なにかを匂わせる内容をわざわざ書かなくとも、文章に「含み」は生じるのです。

これが、省略する方法です。

 

前項のように文言を付け足して余韻をもたせるとなれば、とてもデリケートな執筆になるでしょう。

過剰な書き方をすると、余韻はおろか、奥行きやふくらみも発生しません。

そんなときは思い切って文を省略してみるのもひとつの手ですね。

上手く文脈を引き継ぐことができれば、読み手に想像させる方法と同等か、それ以上の効果を期待できます。

 

 

過不足のないよう気配りする

冒頭にご紹介したとおり、”読後感”をもたらすことのできるのが余韻型です。

書き手は目指すべき”読後感”を想定しつつ、伝わる内容のバランスを考えながら書かなければなりません。

多く書きすぎると「余韻」でなくなってしまいますし、省略しすぎると伝わらなくなってしまいます。

余韻型には、読み手に文章が届いたその先を見据えることで成立するのです。

 

もちろん文末の書き方を凝っただけでは、余韻をもって終わらせることはできません。

当然ながら、終わりに至るまでの過程や、その文脈についてもないがしろにすべきではないのです。

つまり書き手は、文章に余韻をもたらすにあたって方々に気を配ることを求められるのです。

細部の表現はもちろん、文章全体に気を配りながら、ていねいに文章を紡いでいきましょう。

 

■ 参考

Posted by 赤鬼