「他者」が物語にもたらすもの
主人公の設定を詰めるだけでは、小説のなかで人間関係を描くことができません。
他者の存在が必要不可欠です。
良い作品にするため、他者が物語にもたらすものについて考えていきましょう。
もっとも大きな効能は、物語に違った視点を取り入れられることです。
多くの物語が、「主人公」を主体として進められます。
進め方としては当然であり、決して悪いことではありません。
しかし、作中で扱う物事の捉え方に、多様性がなくなってしまう恐れがあるのです。
例
「鳥のフンが肩に落ちてきた。」
主人公 ⇒ 災難だ
自分の身におきかえてみると、本当に災難ですね。
こんな目に遭った主人公からすれば、ネガティブになってしまうのは当然です。
しかし、そこに他者を介入させてみると、興味深いことが起こります。
他者がいれば、たとえ元々がネガティブな出来事であっても、ポジティブな出来事に変えることができるのです。
例
「鳥のフンが肩に落ちてきた。」
他者A ⇒ ”ウン” がついたってことだから、ラッキーだよ
他者B ⇒ 一生涯使えるくらい、おもしろいネタをゲットしたな
他者C ⇒ その服、裾が破れてるからちょうどよかったんじゃない?
もちろん「主人公にとっては喜劇だけれど他者からみれば悲劇」など、逆のパターンも可能です。
「客観的な立場からの意見を取り入れる」と考えれば、描き方の説得力は増すでしょうし、物語も立体化されるでしょう。
必要があれば、他者が「悲劇をさらに悲劇たらしめる」ことや「喜劇を喜劇たらしめる」こともできます。
表層にしかなかったはずの物事を深く沈めたり、上に跳ね上げたりといった、ある種の”加速装置”としての効果があります。
作中で扱う物事に対してさまざまな捉え方を描くには、他者の存在がポイントになります。
主人公の「気づき」や「心境の変化」からそれらを描くこともできますし、そのアプローチは書き手として非常に重要なことです。
ただし、世に出ている作品を読むと、「他者」がきっかけとなっている場合が圧倒的に多いのです。
物語に重層的かつ多角的な価値観をもたらすためにも、他者の存在を活かしましょう。
■ 参考
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